1.インクと涙

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 地蔵が『汐海一』の作品が表示されたウィンドウの後ろに隠れた、別のウィンドウを指差した。そして、差した指がそのまま画面に触れる。 「あ……」  タッチパネル式のディスプレイが地蔵の指に反応し、後ろに隠れていたウィンドウが拡大される。そこには、『汐海一』が書いた『風の果て』の続編と謳われたものが表示されていた。  地蔵は他にも同じようなウィンドウが最小化されて隠れているのを見つけ、それを次々と開いていく。そのどれもが、『風の果て』を模したり、続編と謳ったものばかりだった。 「これ……全部お前が書いたのか……?」 「う……」 「……」 「直哉の……汐海一の刺激になるかと思って……二次創作されるほど、求められているってわかれば、また筆を執るかもしれないって思って……」 「ふーん……この汐海って作家は、お前が通ってる高校の教師ってわけか……」  地蔵は訳知り顔で頷くと、もう一度画面を見た。芙美が書いた作品のどれを見ても、お世辞にもうまいとは言えないものばかりだった。  腕組みをして一通り眺めていた地蔵だが、画面から目を外すと、ふん、と鼻を鳴らした。 「やめとけやめとけ。どうせ、そんなもん見てやいないさ。早いとこ見切りをつけた方がいい」 「でも!」 「でも、も、だって、もない。お前、自分の立場わかって言ってんのか?」 「……それは……」     
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