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地蔵に睨まれ、芙美は小さい肩を竦める。
「早く一介の付喪神から格を上げたいんだろ? 俺だって、早くお前の世話係から解放されたいね」
「……」
「ショゲても駄目だ。お前が一人前の神様になるには、お前がその目で選んだ作家が大成しなきゃならねえんだ。作家が大成するにも、ある程度の時間が要るんだからな。今すぐに決まっても、お前が正式に一人前と認めてもらえるには二、三年は掛かる。そこんとこ、わかってんだろうな?」
地蔵に気圧され、芙美はこくりと頷いた。それに満足したのか、地蔵はうむ、と頷いて、部屋の奥にある戸を開けて出ていってしまった。
外では相変わらず、虫の音が休むことなく聞こえてくる。そのどこか寂しげな声は冷たい月明りと共に、芙美に強い孤独を感じさせた。
――あー、早く学校に行きたいな……。
床に移った格子の影を指でなぞりながら、芙美は冷たい夜が明けるのを待った。
午後の授業も終わり、生徒達は各々の部活へと散っていく。廊下は帰り支度を終えた生徒でごった返し、野球部やサッカー部は少ない時間を無駄にしまいと、教師の制止も聞かずに他の生徒の間を縫うように駆け抜けていく。文化部達はまだ、教室に残って休みの予定を話し合ったりで忙しいようだ。
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