誕生

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 ――記憶は、生まれたその瞬間。目覚めたその瞬間からある。 「わ~~~お」  白に近い、何も見えなくなるほどの明るい光。  目をキラキラとさせて覗き込む顔。天井から降り注ぐ光はまるで後光のように思えた。  上から両手が近づいてきて、チャポンと水音を立てた。湧き上がる水泡が昇っていく。  白い手にそのまま抱き上げられ、水中から空中へ。初めて、空気中から酸素を得た。 「おはよう。そして、おめでとう」  待ってたよ、と満面の笑み。それから「んも~~、かっわいい~~」と抱き潰すようにギュッと腕に力を入れて悶絶する。それを他の手が「貸してください!」と奪い取った。  白い手から離れて、今度は褐色の手。声はさっきよりも高かった。褐色の手に抱かれていると、色んな色、色んな大きさの手が伸びてきた。  濡れた身体を柔らかいタオルで拭き、新生児用の真っ白な服で包み、身長と体重を測り、同時並行で一気に作業が進む。 「髪の毛すっごいな、ふさふさ」  まだ十分に水気を含んでぺったりと額に張りついたそれを撫でるように拭って、彼は笑った。 「さ~~て、名前をつけなきゃいけないな」  顎に手をやり、悩む様子を見せた。周囲からは「ちゃんと考えてくださいよ」「一生モノなんだから」と注意のような声がとぶ。  しかし、すでに集中モードに入った彼の耳には届いていなかった。届いていたとしても、無視だ。 「よし、い~い名前を思いついたぞ!」  ポンと手を叩き、離れていた目が再び自分を見た。 「可愛い可愛い、愛しのマイスウィート。いいかい、君の名は――」
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