出逢い

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出逢い

 セリシア皇国。首都はジュール。  四方を高く険しい山脈に囲まれた小さな内陸国で、大国である「ナミル」「エストラ」「アパリ」「ヘルドクス」に隣接する。  侵略を拒絶し、建国から500年。永世中立を掲げ、独立を保持。「要塞国家」の異名を持ち、ライア家を「皇族」とする立憲君主制を敷く。  世界有数の他民族国家であり、国民は国家と国家元首である「女帝」に忠誠を誓う。この女帝を頂点とする国家システムが民と国を一つにし、何の反乱も起きることなく安定的な秩序と強い愛国心を育てている。  経済裕福度は世界第三位。山脈から採れる多くの鉱物が国を支え、輸出業や機械工業で発展した。  山は恵みで要だが、全てが良いわけではない。国土のほとんどが高度の高い山地であるために作物が育ちにくいという側面を持ち、決して最初から裕福で贅沢な国ではなかった。  セリシアの繁栄は、国民のたゆまぬ努力の結晶。ゆえに民は先人を重んじ、敬意を払う。  世界でも高水準の教育プログラムを実施しており、識字率は100パーセント。セリシアで教育を受けた者ならまず全員がマルチリンガル、数か国語を操る。優秀な科学者・技術者を続々と排出する化学技術大国でもあり、最先端の医学を誇る医療大国でもある。  その一方、古き街並みが残る「童話の国」としても有名で、世界各国から観光客が訪れる観光立国でもある。山地であるがゆえに坂道が多く、侵略を防ぐために造られた街は細い道が迷路のように入り組み、現代に順応していない。  大国の脅威に晒されながらも長きに渡り独立を保てた理由に、まず自然環境があげられる。セリシアの国境はそのまま山脈であり、人の侵入を阻む。しかし、これも科学技術が発達すれば効果はなくなってくる。ここで、セリシアがセリシアたる最も大きな要因があげられる。  ――それが、武力だ。  セリシア皇国は男女共に健康な者は17歳になると皆兵の義務を負う、世界でも稀な男女国民皆兵制を敷く武装国家。軍事力は大国に劣らず、小国ながらも世界トップクラスの実力を持つ。
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