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「おう、ナスカ!」
「あ、お疲れ様です」
「!」
ヤスミンは思わず足を止めそうになった。
前方からやって来た男。「長老組」と呼ばれる現役のベテラン兵士、胸に『銀の剣と盾』を煌々と輝かせるアレキサンドロス。目元や口元に皺があるものの、その渋さがまた最高の美形。「大王」の異名と、それも頷ける圧倒的なカリスマと戦歴を持つ男。
ヤスミンは感動で震えそうになった。さすが近衛軍本部。こんな伝説のような男が普通に歩いている。
アレキサンドロスはナスカよりも年配で経験も上、彼が幹部であろうとも子ども扱い。
「お、そうか!今日だったか」
「そうですよ~」
心底、信じられない。
以前から常々、事あるごとにそう思っていたが、このフランクさはどうかと思う。まるで友達だ。良く言えば親しげ、悪く言えば失礼。少なくとも上下関係を順守するヤスミンにはできない。
「将軍閣下と隊長殿がお待ちなので、また後で」
「おう!」
お互いに手をヒョイとあげ、すれ違う。ヤスミンは立ち止まって挨拶したかったため、歩みを止めるどころか緩めることなく進む上官に反して少し手前で止まり、きちんと頭を下げてからその背中を追った。
そんなヤスミンの行動にアレキサンドロスは足を止め、幽霊でも見たような顔で去り行く背を振り返って見ていた。
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