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日夜問わず、年中無休で皇族警護につくため立派な宿舎が隣接しており、皇族近衛全員がここで暮らしている。ヤスミンも本日付けで転居予定だ。
先程一目見て驚いた。宿舎なのだが、宿舎ではない。少なくとも、今までヤスミンが暮らしていたそれとはまったく異なる。
貴族の館ほどの規模と壮麗さがあり、皇国軍の「赤」ではなく、宮殿に多く使われている「白銀」だ。近衛軍の施設は共通してこの白銀。ヤスミンも慣れ親しんではいるが、こんな豪華な出で立ちではない。
これはセリシア皇国、北の国境であるベルベラ山脈から採れる「氷雪石」といわれる超高級石の色。石自体は銀がかった白で、その美しさからライア宮殿のみならず、輸出された世界各国の城や宮殿、高級住宅や大規模建造物、彫刻にも使用されている。これを床に敷くと、そこ一面が銀盤になる。
「――さて」
白い扉の前。ナスカが両足を揃えて足を止めた。
「俺がお前の上司でいられるのはここまでだ」
「――はい」
「しっかり役目を果たせ」
「――ありがとうございました」
互いに目は合わせない。前を向いたまま。
ヤスミンは、その背に深く頭を下げた。
ナスカは白いグローブをした手で、扉をノックした。
「失礼致します。ナスカ、ただいま参りました」
中から「入れ」と声がする。
途端、電流が身体中にはしった。息が詰まり、血が音を立てて巡るのがわかる。扉の向こうまで届いてしまっているのではないかと思うほど、心臓の音がうるさい。
地震がないこの国で、それが起きているのではと思ってしまうほど、足元がグラグラと揺れている。憧れの近衛軍に入隊した時も緊張したが、その時もこうだっただろうか。
カチャ、と扉が開く音がした。
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