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早朝の街は、うっすらともやがかかっていた。
空気中の湿気は相変わらずで、今は降っていないけれど、今日もそのうち降りだすのだろう。ただ、朝のせいかまだ空気がひんやりしている分気持ちがいい。自転車で走りながら深呼吸すると、体の中からすっきりした気分になれた。
「おはよー」
カランコロン
お店のドアを開ける、とかわいらしいベルの音。この音を探すために、たくさんのお店を回って、色んなベルを片っ端から鳴らして決めたという、おばあちゃんの自慢のベル。「柔らかくて、優しい音でしょ?」と得意げにいつも笑っている。
「あら、美雨おはよう。今日学校は?」
奥の厨房から出てきたおばあちゃんが私の顔を見て首をかしげる。同時にパンが焼けるいい香りが漂ってくる。おばあちゃんに近づくとそれが一層濃くなった気がした。
「あるよ、普通に。平日でしょう。……朝五時から何言ってるの」
「そうでした、そうでした。私たちには出勤時間でも、皆さんはまだまだ布団の中~」
歌うようにそう言いながら、また奥に戻っていく。
「なんか、手伝い、ある?」
追いかけながら、そういうと、
「宿題終わってるの~?」
と冗談めかして聞いてくる。
「もー! そういうのはいいの!! おじいちゃーん、手伝いないー?」
向こうで、機械の前に立って生地の捏ね具合を確認しているおじいちゃんの方に声をかける。
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