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輝いているみたいな卵の黄色に、たっぷりのマヨネーズ。しっとりと、目分量のくせにほとんど同じグラム数に切り分けられたハム。レタスやトマトはバットの上で水気をきられている。おばあちゃんの仕事ぶりを見ていると、いつも鮮やかで、楽しそうで。子供のころは手伝うたびに、
「おばーちゃんとおんなじのがやりたい!」
って、駄々をこねていた。今はそんなことはしない。言われたとおりに、えいや、えいやと食パンを型から外していく。それを棚に並べて粗熱を取る。こんがりとした焼き色にうっとりする。いい人に買ってもらって、美味しく食べてもらいなよ、とパンに心の中で声をかけてみたりする。
「一番手のから切って、サンドイッチ作ってしまおうかしらね~」
「あ、じゃあカッター準備するね?」
「美雨、ご飯は食べたの」
「食べてきたー!」
答えながら店の方へ向かう。昔は厨房にもカッターがあったのだけど、調子が悪くなって捨ててしまって以来、パンのカットは店でしている。それで全然間に合うから、とおじいちゃんもおばあちゃんも笑う。開店以来ずっと二人だけで切り盛りしている小さなお店。
「私が切ってもいいー?」
「ええー? 美雨に任せたらパンに穴開けられるー!!」
「もうっ、小学校の時の話でしょ!」
「……じゃっ、任せた。その間におばあちゃんはクリームパンのカスタードつくろーっと」
「今日、クリームあるんだ……」
「なあに? 取っといて欲しい?」
「……いい」
「やせ我慢~」
にやにやするおばあちゃんを無視して、カッターのスイッチをオンにした。
「やーせがーまん、やせがまん」と歌いながら、おばあちゃんが去っていくのを確認してから、手元の作業に集中する。ゆっくりと確実にパンをカットする。パンがカットされていく感覚を掌で感じる。イーストの香りがまた新しく香り始めた。おじいちゃんが新しい生地に取り掛かったんだろう。
ここにいるとすべてがここちいい。
大好きで、大好きで、好きすぎて。生きている意味ってこういうことだと思う。私がほしいものはこれで。ここがほしくてほしくて仕方がない。
「パン屋さんになりたい」
17年間ずっと、それが私の「夢」だ。
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