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 ぴちょん、ぴちょんと大きな水の粒が、屋根を伝って玄関ポーチに落ちてくる。 灰色の空から次々に降ってくる雨は、細くて頼りなさそうに見えるけれど止む気配はなかった。  朝、持ってきたはずの傘は、何度見ても入れておいたはずの傘立てに入っていなくて、どこをどう探しても、見つからなかった。今日に限って折り畳み傘も持っていない。  はあ、と知らず知らずのうちにため息が漏れる。  それももう何度目だろう。  ついていない日と言うのは、とことんついていないものなのだと思い知ることが多くなってきたような気がする。  子供のころは、明日は真っ白な新しい一日だと感じられたけれど、今はもう、今日は昨日の続きで、明日は今日の続きなんだとはっきりとそう思う。 「はあ」 思考が暗くなっている。   やめようと思っているのに、今日ぶつけられた言葉を勝手に脳が再生する。
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