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「失礼しました」
エアコンが効きすぎて、廊下とは違う国みたいになっている職員室から滑り出すように逃げ出して、衣替えしたばかりの半袖の腕を撫でた。
すっかり冷え切ってしまったからだがほっとしているのが分かる。
「よく親御さんと相談してくるように」
学年が変わって、同じ言葉をもう何度聞いたかな、とため息をついた。
先週梅雨入りをしたばかりで、やっぱり今日も雨が降っている。
そのせいで湿気を吸った制服がずっしり重い気がする。
昔ながらの紺色のジャンパースカートの制服の胸のあたりをいつの間にか握りしめていたことに気付く。その部分にだけ皺ができていた。
教室に荷物を置きっぱなしにしているから、仕方なくそちらのほうに歩きだした。
ゆっくり通り過ぎる廊下は嗅ぎなれた匂いで、いつもと変わり映えしない照明の暗さも、しんとしているくせに妙に足音が響くところも、嫌いではなくて。ここを嫌いではないと思うたびに、自分が恵まれていることを理解させられている気がしていた。
学校を、嫌いだなんて思いたくない。
そんなふうに思えてしまう自分が、いい子ちゃんで、甘やかされて、守られていることはわかっているつもりだけれど、じゃあいつまで守られていなければならないのか、甘くない世界に行きたいと願うことが、それすら甘いことなのか、わからないな、と思
う。
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