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 「はーまいったなぁ! ホントにごめんね」 参加者のみんなとの試食や片付けが終わって、三年だけで残って反省会だ。 しょんぼりと謝る牧に「全然、いいよ」って手を振るけど、なかなかショックは薄れないみたいだ。 南も、大きなため息とともに、 「フレンチトーストくらいは、そろそろヒナなしでも成功したいよー! もう調理部に入って二年も経つのにー」 そう言ってがっくりと肩を落とした。  私たちは調理部で、料理を作ったり、レシピを書いたりするのが部活内容だ。時々こうやって校内でクッキング教室をしたりする。  調理部だからって、料理上手が集まるっていうわけでもない。上手な子たちは、自分でレシピや動画を見て研究できるから、うちの部に集まるのは実は料理が苦手で覚えたいという子が多い。同級生で三年生の牧と南を筆頭に、二年生の川ちゃんこと川村さんも吉岡さんも料理が苦手だ。 「こうゆうときに予想していないことが起こったら誰でも焦るって」 牧の肩をポンとたたく。 「それよりごめんね……。今日、私が責任者だったのに、呼び出しとか」 謝らないといけないのはこっちだ。部活前にちょっと、が長くかかってしまった。 「いいよー、でもしっつこいね。先生の気持ちもわかるけどさ。南ぃ、紅茶お替り」 牧がカップを掲げると、 「そりゃそうだよー。ヒナ学年一位だもん。粘りたくなるよ」 南が全員のカップにお茶を注ぎながら言う。南は紅茶をいれるのが異常に巧い。 「えっ! 先輩って学年一位なんですか?」 加山君が、もぐもぐ口を動かしながら言った。急なお買い物のお礼とばかりに、彼の前にはすべての種類のフレンチトーストがてんこ盛りにされていたはずだけど、もう半分くらいしか残っていない。 「……そんなわけないでしょ~。」 うちの高校はマンモス校なので、どんなに勉強したって常に一位なんてことはあり得ないし、無理だ。
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