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「ほら、これで共犯」
そう言って彼が笑う。
彼が血糊でベッタリと赤く艶やかな手で汗を拭うと、頬にもそれが付いた。
「それじゃあ、ばれちゃう……」
クスリと笑って私がそれをハンカチで拭き取る。
そのハンカチを持つ私の手にも服にも至る所に血が付いている。
笑ったのは、いつぶりか。
目の前で出刃包丁を握って笑う彼は、私のために手を汚してくれた。
転がる死体。
土の上でだらりと伸びた手足。
死んだ魚と同じ目をしてどこかを見ている。
もう、ずっと前から既に私の愛した男ではなかった。
DV男。
逃れられずに私は苦しんだ。
それから解放してくれたこの殺人者を、どうして愛さずにいられようか。
了
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