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「……あの、この雑誌ですけど、実は私が勤めている出版社で発行してるんです。」
そう言うと彼は驚いた顔で私を見た。
「それで、取材の件、お話がいってると思うんですけど。」
男はずっと目を見開いて私を見ている。
やっぱりこの話はまずかったかな、と一瞬思った。
彼は見開いた瞳を少しずつ閉じていき、半分くらいの大きさまで瞼を下げた。
猫のような大きなアーモンドアイと、クマで落ち窪んだ下瞼のせいで、半分しか目を開いてなくても 充分大きい。
何か考えているような感じに首を傾げた。
「あー、そうなんすか。なんか突然電話きました。それで結構無理くりな感じで取材受ける事になってるみたいすね。」
サヤカの事だ、上手いこと言って押し切ったのは目に見える。
でも怒っている感じではないみたいだ。
だけど乗り気でもない。
そんな感じの口調だ。
「すみません。担当の者が失礼な事をしてしまったみたいですね。」
「え?あぁ、別にいいっすよ。すぐ終わるって言ってましたし。」
「じゃあ、大丈夫なんですね?」
「……大丈夫す。」
そう言うと彼は手に持っていた雑誌を棚に戻した。
「おねえさんもその担当なんすか?」
おねえさん?
確かに彼の方が少し歳下だったかもしれないが、
同年代の人にそんな事を言われた事はないので、違和感を感じる。
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