第三話 再見

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藤本さんは初めに会った時に見せた、猫のような笑顔で笑いかけてきた。 「じゃあ、サカモトさんに会えるの、楽しみにしてますー。 お休みなさい。」 そう言って頭をかきながら軽く会釈すると、そそくさと変な小走りで コンビニから出て行った。 私はしばらくその場で立ち尽くしていた。 会えるのを楽しみにしてるって事は、取材には良心的って事? それとも私のオンオフが見れるのがって事なのか……。 後からオフの顔を見られるのも相当恥ずかしいが、 先にオフの状態で会ってからオンの顔で会う方が数倍恥ずかしい気がする。 そんな事を考えていたから、しばらく心此処にあらずの状態だったと思う。 気がつくと、頬の熱がひいていた。 まぁ、考え込むのは私らしくない。 今日はもう帰ろう。 結局コンビニに入ったが、ただ藤本さんと話しただけで出てきてしまった。 色々思うところはあるけれど、取材をちょっと楽しみにしている自分がいた。 また、彼に会ってみたい。 これは多分恋じゃないけど、気になって仕方が無い。 これから楽しくなりそうだ。 外に出ると、春の夜風が顔にあたって気持ちが良い。 私も彼の真似をして変な小走りで家に戻ることにした。
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