第四話 藤本書店

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「何よ、お待ちかねって。別にそんなつもりじゃ……」 「そうねー、今日は何かメイク薄い感じがするし。 もしかして本間さんの方が好みだった? 本間さんの取材の時の方がバッチリって感じだったかも。」 「違うわよ。公私混同は誰かさんと違ってしないんです。」 確かに今日はいつもよりナチュラルメイクにしてきたかもしれない。 コンビニでほぼスッピンで会っているから、バッチリメイクで「なんか、別人みたいすね。」なんて言われたくないから。 「14時に藤本書店の予定だからお昼食べたらすぐ出る感じでよろしくー。」 「了解。」 軽くお昼を済ませて、カメラマンの大久保君と合流し、藤本書店に向かう。 藤本書店は昔ながらの商店街がある大通りの路地を曲がったところにひっそりとあった。 お店の引き戸を開けると、ドアベルがチリンと音をたてた。 「何か、昭和や明治あたりにタイムスリップって感じね。」 サヤカが小声で話しかけてくる。 確かに。 でも彼自身がタイムスリップしているような人だから、今更驚きはしないけど。 店内を見回すと色んなジャンルの古書が置かれている。 文庫、新書に限らず、映画関連や音楽関連、かなり古い写真集などもある。 「こんにちはー。14時に取材をお願いしていました、ハクジ出版の美崎です。」     
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