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サヤカが少しトーンを上げて店の奥に聞こえるように挨拶をした。
店の奥にある襖の方からガタガタと音がする。
二階から人が降りてくるようだ。
しばらくすると、襖がすーっと開いた。
そこには彼が立っていた。
今日は濃い灰色の縦縞が入った着物だ。
相変らず髪の毛はボサボサで肌は白い。
「あ、どーも。お待ちしてました。店長のフジモトです。」
襖から続いている半畳ほどの小上がりに正座して軽く会釈をした。
サヤカが目を丸くして藤本さんをまじまじと見ている。
確かに初めて見た人は驚くかもしれない。
座っている彼は落語家みたいにも見える。
「こんにちは。ハクジ出版の坂本です。こちらはカメラマンの大久保です。お忙しい中失礼しますが、少しだけご協力お願いします。」
「へぇ。見ての通り全然忙しくないんで、どうぞおあがりください。狭くて汚いですけど。」
そう言うと、襖の奥にある階段から二階に上がるように促された。
どうやら一階がお店で二階で生活しているようだった。
「……なんか想像以上におもしろそうな人だね。しかもありえないくらい顔が綺麗。」
サヤカが小声で色々と話しかけてくる。
私は曖昧に返事をした。
サヤカが騒がしい分、カメラマンの大久保君は無口なので助かる。
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