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適当にファッション誌を手にとってトレンドを一通りチェックした後、缶ビールとおつまみを買って部屋に戻る。
深夜のコンビニは夜なのに、光る箱みたいに明るい。
なんとなくコンビニに入ると自然との不調和の中にいるような気がして、そんな所にいる自分は本当の自分ではないような、そんな気がしたりもする。
ある日の仕事休み前の深夜、私はいつも通りコンビニに入った。
入るとすぐに左に曲がり、女性誌コーナーの前で立ち止まる。
雑誌を目で追いながら、適当に手に取る。
その瞬間、右からすっとその雑誌に手が伸びてきた。
少し手が触れてしまい、瞬間的に手を引っ込めながら相手の顔を見た。
「あ、すいません。」
そう言うと、相手は軽く頭を下げた。
何となく女性誌は「女性」が見るもの、と決め付けていたが、その綺麗で長い指の持ち主は男性だった。
髪はくしゃくしゃの猫ッ毛で目の下はちょっとクマっぽい感じ。
肌の色が白く、少し不健康そうに見えた。
ただ、そんな事より私が気になったのは彼の服装だった。
今の時代には似合わない服、というか着物だった。
深夜のコンビニ、しかも着物に下駄という装いで、なぜか今のトレンドを紹介している女性誌を見ようとしているのだ。
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