第五話 藤本書店ー其の二ー

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甲斐サオリはやり手の女編集長で私よりサバサバしていて、男らしい。 入社時から何かと力になってくれている。 唯一弱音を吐ける人物と言っても良いかもしれない。 だいたい悩んだ時やモヤモヤした時は飲んでぱーっと忘れるのが私のやり方だ。 特に何が解決する訳じゃないけど、飲んで寝る。 それで次の日には忘れる、ようにする。 こんなやり方しか私は気持ちを切り替える方法を知らない。 感情の電源をオフにして、黙々と作業に打ち込んだ。 退勤時間まであっという間に時間が過ぎる。 デスクで大きく伸びをすると、編集長が「飲みに行くぞー」と口だけ動かして既にドアの前で待っているのが目に入った。 慌てて私は支度をしてタイムカードを押し、編集長と一緒に会社を後にした。
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