第八話 現想―其の三―

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「……ちょっとは酔い、覚めました?」 「……はい、何だか恥ずかしいところをみられてしまって。」 「全然。おもしろかったす。」 おもしろい?そっちの方が恥ずかしいわよ。 「いつもサカモトさんはおもしろいす。色々で。」 「え?何がですか?」 「コンビニで会った時と、うちの店で会った時で全く違う感じでした。今日もちょっと違う感じがするし。」 ……いろいろか。 確かに色々自分をつくっているのかもしれない。 現代人は状況によっていろんな性格を使い分けていると思う。 だけど、藤本さんは全く使い分けていない。 誰に対しても同じ、というか。 「……そうですか。藤本さんはいつも誰にでも訳隔てないですよね。羨ましいです。」 「そうすかねぇ。そんな事もないと思うんすけど。」 そう言うと頭をかいた。 頭をかくのが癖なのかもしれない。 猫ッ毛の髪が揺れる。 「そういえば、こんな時間に何されてたんですか?」 「え?あぁ、散歩す。春の夜風が気持ち良いんで。」 「散歩?藤本さんのお家から結構距離あると思うんですけど……。」 「裏道があるんすよ。最近見つけたんす。」 「あ、それであのコンビニにも?」 「そうすね。どんな感じのところかなと。」 「どんな感じのところ?」     
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