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第九話 現想―其の四―
「……で、どうでした?コンビニ。」
「へ?あぁ、なんだか色鮮やかでしたね。」
「色鮮やか?」
「ええ、色んな色の物がたくさん散らばっていて…….いつも古い物にばっかり囲まれているんで、新鮮な感じがしました。」
色鮮やか……。
いつも利用しているけど、そんな風に感じた事は一度もない。
ただ便利で、ごちゃごちゃ物があって、そこから自分の必要な物を買うだけの所―。
初めてコンビニを利用した時の事を思い出そうとしたが、うまく思い出せなかった。
私も、初めて入った時は、商品が色鮮やかに見えたのだろうか……。
「そうなんですか。あと、ずっと聞きたかったんですけど、何で女性誌なんて見てたんですか?職業柄リサーチしていたとか?」
「まさか。一番色が多い場所にあったので。何となくすよ。」
そう言うと、藤本さんはにっと笑ってみせた。
ネコみたいな笑顔。
この掴みどころがないのについ気になってしまうような笑顔に、私は惹かれているのだろうか。
「何となく……ですか。色鮮やかなんて、やっぱり藤本さんは物の見方が他の人と違う感じがします。」
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