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あまりのミスマッチさに、自分は本当に不調和な世界に溶け込んだのかと一瞬思ってしまった。
「あ、いいすよ。どーぞ、どーぞ。」
男はそう言うと、隣にあった違う女性誌を手にとって読み始めた。
私は何も言えずに、彼から譲られた女性誌を読んだ。
正確には読むフリをした。
突然現れた、タイムスリップしたような格好の隣の男が気になって仕方なかったのだ。
雑誌で半分顔を隠しながら、その男をちらちらと盗み見た。
さっきは咄嗟の事でわからなかったが、よく見ると格好は風変わりなものの、かなり顔の整った青年だった。
年齢は私より下にも見えるし上にも見える。
見すぎたのか、私の視線に気づき、その男が私をじっと見てきた。
慌てて自分の持っている雑誌に目を走らせる。
それでも男は私の方をしばらくじーっと見ているようだった。
しばらく恋愛をしてない独身女性なんていざ知らない異性に想像もしていなかった形で会うと馬鹿みたいに緊張してしまう事がよくわかった。
もしかして、この人も私の事が気になったりするのかな。
なんて自意識過剰に一瞬思ったが、よく考えると今の私の姿はメガネでスッピン、部屋着姿だ。
こんな格好の女に恋する男はこの世界に何%いるのだろうか。
おそらく10%満たないのではないか。
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