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もう少し一緒にいたい気持ちがなぜか回り回って名前の話を出してしまった。
「……あ、はい。全然大丈夫す。ワタシとりょーこさん、もう友達みたいなもんすから。」
「え?友達?」
「へぇ。じいちゃんが三回会ったらその人とはもう友達だって。仕事でお会いするの抜いたらこれで三回目す。」
頭を少しかきながら藤本さんはにっと笑ってみせた。
「は、はは……友達。」
私はぎこちなく答えた。
「じ、じゃあこれからよろしくお願いしますね、草士さん。今日は本当にありがとうございました。」
「はい、よろしくお願いします。それではお休みなさい。」
「……お休みなさい。」
そのままぎこちなく笑顔を作って私は彼を見送った。
友達か……。
興味を持ってもらえていることは嬉しい。
でもそれが友達としてというのなら、少し寂しい気持ちになってしまう自分がいた。
こんな時、サヤカならめげずに「友達になれた記念にうちでお茶でもしていきませんか?」なんて言いそうだ。
でも私にはそうゆうことを可愛く言うことができない。
ふらふらと歩いていく藤本さんの後ろ姿を見つめながらそんな事を考えていた。
部屋に戻るとすぐ着替えてメイクを落とした。
時計を見ると午前一時を回っていた。
手ぬぐいからお香の匂いがする。
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