第十話 追想

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第十話 追想

起きると午前11時を過ぎていた。 飲みすぎで頭が痛い。完全な二日酔い。   昨日、草士さんに会ったのは夢だったのではと思ったが、しっかり手ぬぐいが干してあるのを見て現実だったのだと再確認する。 入念に洗ったので、汚れも綺麗におちた。 よく見ると手ぬぐいには薄く桜の模様が幾つも入っている。 手ぬぐいってお洒落なんだな。 何だか素敵な柄だし、私じゃ使いこなせない気がしてやっぱり草士さんに返した方が良いと思った。 今日はお休みだし、これから会いに行こうか。 友達宣言で下の名前で呼ぶ許可をもらったものの、昨日の今日で(正確には今日の今日)で会うのも迷惑かな。 二日酔いの頭で考えるとこめかみのあたりがズキズキした。 さすがに今日の今日で押しかけるのは悪い気がしたので、来週、会社の帰りにでも藤本書店に寄ろうと決めた。 決めたは良いものの、次の週は想像以上に忙しく、帰りに寄れる程の余裕はなかった。 あの日からあっという間に一週間がすぎてしまった。 とても時間が経った様な気がしたが、まだ一週間しか経っていない。 金曜日の夜にコンビニに行ってみたが、草士さんの姿はどこにもなかった。 全てが夢のように感じて不安になる。     
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