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草士さんの姿も見えない。
「こんにちは。坂本です。草士さんいらっしゃいますか。」
少し声を張ってみる。
店内はしんと静まり返ったままだ。
もしかしたら出かけているのかも。
アポなして来るなんて、やっぱり思い切りすぎたかもしれない。
また出直そうと思い、引き戸に手をかけようとした時、二階からガタガタという音が聞こえた。
「いらっしゃいませー。お待たせしましてすみません。
ってりょーこさんじゃないですか!どうしたんすか。」
草士さんはぺこっと頭を下げながら襖を開けて出てきた。
頭を下げていたので最初、私だという事に気づかなかったらしく、私と気付くと目を見開いてぱちぱちと瞬きをした。
「あ、こんにちは。この前はありがとうございました。これ、やっぱり返そうかと思って……。」
そう言うと私は手ぬぐいを差し出した。
草士さんは目を丸くして手ぬぐいを見つめている。
しばらくすると目を半分くらいまで細めてにっと笑った。
「これはりょーこさんにあげるって言ったじゃないですか。わざわざ届けにきてくれたんすか?」
「はい。何だか素敵な手ぬぐいだし、悪いかなって思って。」
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