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第十一話 追想―其のニ―
今日の彼の着物は焦げ茶色。
黒い帯には桜の花びらの刺繍がされている。
さり気無いお洒落が素敵だと思った。
あまり着物など着ないけど、こうやって季節を取り入れる事によってお洒落を楽しむ事が出来るんだな、と感心してしまう。
「どうぞ、散らかってますけど、お座りください。」
「……失礼します。」
以前取材に来た時と変わらず、掛け時計のカチコチという音だけが部屋に響いている。
この前来た時は急ぎ足であまり部屋全体を見てはいなかったが、本当に今風の物は一切と言っていい程置いていない。
コンビニが色鮮やかと言っていたのが何となくわかる気がした。
「お待たせしました。どーぞ。」
「ありがとうございます。」
目の前にお茶とお菓子を出された。
そのお菓子を見て少し驚いた。
和菓子が出てくると思っていたが、シュークリームが出てきた。
しかも間違ってなければ、最近流行っている洋菓子店のシュークリームだ。
「あの、もしかしてこのシュークリームって、シュクレドールのじゃないですか?」
「へ?あ、そんな名前だったかもしれません。美崎さんから頂いたんすよ。」
「え?サヤカから?」
「へぇ、この前の取材のお礼とか言って昨日お店に持ってきてくれました。」
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