陽気な死体は陽気に語る

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　怖い話って言えば、この前俺もかなり怖い体験したんだよ。マジで怖いから心して聞けよ。

　十何年か前に潰れた山田胃腸科病院があるじゃないか土地の買い取り手がいなくて放置されている廃病院だよ。一か月ぐらい前にあそこに正孝と佳奈美に唯と一緒にカップル二組で肝試しに行ったんだよ。

　あそこは立ち入り禁止だって？　知ってるよ。それに夜、本物が出るっていう噂があるんだろ？　あの病院は赤字経営なのを隠して突然潰れたから病院を転院できずに亡くなった人がたくさんいたんだろ？　だから、肝試しになるんじゃないか。

　夜十一時ぐらいに病院前に集まってさ中に入ったんだよ。中庭っていうのかな正面玄関までの道はまだ舗装があったんだけど、あちこちがひび割れてて隙間から雑草がかなり伸び放題になっていたんだ。

　正面玄関のガラスはあちこちが割れてて残っているガラスで体を切らないように俺たちは中に入ったんだよ。午前中に雨が降っていたからさ湿気が凄くて病院の中はじめじめとしてて体に何かがまとわりついているみたいで気持ち悪かったよ。

　病院の中は月明りしかなくて暗かったから正孝が持ってきた懐中電灯をつけたんだ。やっぱり中も荒れ放題だったよ。待合室の椅子はびりびりに破れていたし、あちこちに物が散乱してた。

　でも、雰囲気は確かにあったけどそれだけだったよ。本物の幽霊なんてやっぱりいないんだって思ったね。一階を半分ほど回ったところで二階にあがる階段を見つけたんだ。正孝と佳奈美は二階を見てくるって言ったから俺たちは一階を回ることにしたんだよ。

　一階は診察室があるだけで特別変わったことはなかったな。割れた注射器とかはあったけどな。そんなのただの割れたガラスだろ？

　しばらく見て回っているとエレベーターホールにたどり着いたんだ。一階を回るのも飽きたから上の階に行ってみようって話になったんだ。上に上がるボタンを押して待ってるとしばらくしてエレベーターが降りてきたよ。