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 何とかエレベーターは四階にたどり着いたんだが、やっぱり古くて壊れていたんだろうな。扉が廊下より三十センチぐらい低くなってたんだ。這い上がるようにして廊下に出るとしばらく腰が抜けて立ち上がれなかったよ。  俺たちが這い出た直後にエレベーターの扉が閉まったんだ。しばらく呆然と階数表示のところを見つめていたんだけど、ぱっぱっぱっ。って階数表示が下がっていったんだ。誰もエレベーターの操作なんてしてないのに。  でも、もしかしたら正孝達が下の階でエレベーターを押したのかもしれない。とにかく一度合流しようって話になって俺たちは互いに体を寄せ合って歩いた。さっきまで何ともなかった光景が一変して見えたよ。四階だって一階とそんなに変わった場所なんてなかったはずなのにちょっとした風切り音や物音が全部怪奇現象みないな気持ちになってくるんだ。  あの病院は作りがちょっと特殊でさ、下の階に降りようと思ったらエレベーターか中央階段しかないんだよ。エレベーターはもう乗る気がしなかったから、どうにか階段で降りようってことになったんだ。  三階まで降りたのはよかった。エレベーターの事は怖かったがそれ以外は特になにもなかったからな。一応三階の廊下を覗いてみたけど、正孝達の姿は見えなかったからまだ二階にいるんだろうと思った。  二階に降りるためには大きな問題が一つあったんだ。二階と三階の間の踊り場にある全身鏡の噂を知ってるか? そう、深夜の病院でその鏡に自分の姿を写すと未来の自分の姿が見えるっていう噂だ。  唯がその噂を怖がってなかなか階段を降りられなかったんだ。でも、階段を降りないと合流できないし病院からでることだってできない。鏡を見なければいいとも思ったんだが踊り場の横の壁に取り付けられているから階段を降りようと思ったらどうしても目に入ってしまう。目をつぶっていればいいからって説得して階段を降り始めたんだ。    問題の鏡の前まで来て、鏡の前についた。鏡が視界に入ったからそっと鏡を見ると唯が立っている姿が映っているだけだった。噂は噂でただの鏡だったんだよ。唯に安心させようと鏡を見るように言った。ただの鏡だって。鏡の中の唯が笑った。本当にただの鏡で安心したんだと思う。  唯の手を引いて階段を降りて二階で正孝達を探したんだ。
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