「始まり」から「終わり」まで

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 「許して。御免なさい、御免なさい」  少女キハは膝を付いてガタガタと震えながら、目の前に横たわる物言わぬ君に、ひたすら許しを乞うのだった。  盗賊、悪党だ。アレは鬼畜。無慈悲な人の姿をした悪魔がキハの住む集落にやって来たのは今から数時間前の事。奴等はやりたい放題。キハもその犠牲になろうとしていた訳だが...話しは少しだけ遡る。  山間の小さな街。そこからさらに険しい山道を半時程、馬で駆けた先に大きな湖と20数名が暮らす集落があり、キハはそこに住む1人だった。雄大な自然に囲まれた森奥の集落... そこはなみなみと水を湛える群青に耀く湖畔側にあり、七色に咲き誇る草花が春風に靡いていた。平和... まさにそのもの。だが、世界は広い。街を、さらには山を越えた先には華々しい都があり、着飾った王や貴族が住むと言う。しかし、この集落はそんなものとは無縁で、穏やかに時は流れていた。 なのに... それは呆気なく、崩れ去る。
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