私の明日に君はいない

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「あ、ちょっと待って。靴の紐、ほどけた」 「どんくさ」 「関係ないし」  しゃがんで、ほどけたスニーカーの紐を結び直す。「先に行ってるぞー」のろのろと自転車を押しながら、良和が横断歩道を渡る。  ちょっとくらい待ってくれてたっていいのに。そういうところは気が利かないなぁ、と、苦笑しつつも、飾らない距離感が嬉しかった。  紐を結び終え、立ち上がる。「おまた――」    キキィーッ!!  車が急ブレーキを踏む音。  次いで、ガシャン、と自転車が吹き飛ぶ音。  悲鳴があがった。  それが自分の口から発せられたものだと理解するのに数秒を要した。
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