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勘が告げている。面白い事が起きる。男は経験するために。知られては困る素顔をさらした。
向かいであぐらをかく。男は銃を突き付ける。悠貴は凍りついたが。好奇心が上回る。首を傾げた。彼の口が動いたのは分かるが。言っている言葉を聞き取れなかった。
じっと、見つめてくる。男は後ろを向いて、口の横で手を立てる。悠貴は目を丸くした。自分と同じ歳くらいの女の子が走ってきたからだ。小花柄の白いワンピースを着た。
側に来た子どもは、斜め掛けしたピンクのポシェットからメモ帳とペンを取り出して渡す。男はページを開いて書く。突き付けられた悠貴は覗いた。各国の言語で記された中で、自分の読める文を拾う。
「坊主、頭が良いな。俺に知恵を貸してくれるなら、命を助けてやってもいいぞ」
「パパも?」
ペンを取り上げて、悠貴は一言。男の返事はない。顔を上げて、口を見るが。動いていない。黙ってまま、考えを巡らせている。持て余した悠貴の耳に届く。高い音が。耳を澄ませた。
「真! 真! どこ? どこにいるの?」
名を呼ぶ声だ。悠貴は推理する。自分と同じく爆発に巻き込まれた子がいて、母親が捜しに来たのだ。
「つまんねぇなぁ」
男は思わず、本音をもらす。ちゃっかりしているが。子どもは予想どおりの反応だ。泣いたり怯えたりしないところが違った。
男の舌打ちに、機械音が重なる。腰に巻いたバッグからスマホを取り出す。下からの報告だと知り、電話に出る。
「ご苦労。……警戒を続けて、異常がなければ引き上げてくれ」
指示を出して、男は切る。スマホをバッグに仕舞った。
改めて、子どもと向き合い、妙な形の服と気づく。白のTシャツに埋もれているとしか思ってなかった。男の記憶にある。似た服を着た人に会った。
観察を続ける。男は発見する。子どもの首元に、細い銀色の鎖を。服の中に隠せる、胸元に下がるペンダントだ。指で掴んで引っ張る。子どもの抵抗を受けたが。肩を軽く押すだけで、ひっくり返った。
鎖が外れて、ロケットが転がる。視線で動く物を追う。かなり小さいが、つぼみの形をした。最も、豪華と言われる花の。
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