交錯する運命

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「面白い! 楽園出身か。相手にとって、不足はないな」  手前に引っ張り、鎖を切る。アスファルトに転がるつぼみを銃で撃ち、男は破壊した。 「パパと話し合いをする。先に、ママの所に行きな」  大切にするように、父の光貴から教えられたペンダントだ。壊されて、呆然とするが。はっきり聞き取れた男の声に、悠貴は色めき立つ。ママはどこにいると伸び上がる。 「真!」  面倒くさがった男は、悠貴を抱え上げる。現れた女の方に、放り出す。抱き留めた女は状況を見て、瞬時に判断。子どもを抱えたまま、走り出す。  自分は真という子じゃない。男が勘違いした。混乱した悠貴は、黙って見ていた。男が光貴に、銃口を向けるのを。  詩音は手続きをした。大量に買った品々を。自宅に送る。夫と息子は、押し付けて出掛けた。店を出ると、海へ向かう。無性に、海が見たかった。  詩音は足を止める。肚の底に響く震動。誰もが事件が起きたと想像する。真っ先に、脳裏に真の姿が浮かぶ。真也とどちらの方へ、向かったか知っている。市場内の通路を小走りで進む。自分を責める。行かせなければ。  心配よりも、疑いが上回る。通路に立つ男たちに。詩音の行く先々に居た。服装は、地元の人が着る風通しの良い物だが。脇を通り抜けるには、勇気のいる雰囲気だ。思い切って、建物を出て外側から回った。  瓦礫の山の前。詩音は真を発見する。斜め後ろに、真也も。無事だったのだ、二人共。喜んで、足を一歩踏み出す。次が出なかった。 「母ちゃん! 母ちゃん! どこ? 返事して」  母親を求める真の悲痛な叫び。詩音は知っている。真は自分をママと呼ぶが。母ちゃんとは、呼ばない。正しかったのだ。探偵の調査結果は。  真也が近寄る。膝をつき後ろから真を抱きしめる。夫が息子にささやいた言葉に、詩音の頭は真っ白になる。 「花梨母ちゃんの救出は、プロに任せて。詩音おばちゃんの所に行こう」 「うん」  ふらふらと、詩音は来た道を戻る。 「真はいなかった、あそこには」  外に出て、風に吹かれた詩音はつぶやく。自分を納得させるために。真を捜す決意をした。
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