交錯する運命

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「先日起きた事件で、推理ゲームをしないか?」 「うん!」  三度の飯より、推理ゲームが好き。思い出した光貴は効果があると見込む。息子に提案する。たちまち、悠貴は興味を失う。並ぶ店にも、通り過ぎる人たちにも。目を輝かせて見上げる息子に、自分の推理を語って聞かせた。 「次は僕の番だね。……僕は利用されたと思う。犯人に。地域の住民が日常生活でクセになっている事を、少しずつ。だから、住民を責められないし。先に、芽も摘めない」  続いて、悠貴が自分の推理を語る。  内心、光貴は笑う。かわいいな、と。常々、息子が観察眼と洞察力が鋭いと思ってきたが。まだまだ、子ども。突拍子もないことを言い出す。  悠貴は不満だ。父親が聞いていないことに。事件の犯人を推理したとき、勘が働いたのだ。もう一度、事件が起きる。 2  観光客なら、必ず、一度は訪れる。有名な市場。手頃な値段で、土産が手に入る。現地でしか買えない。物欲が満たされて、疲れを思い出した頃。レストランに吸い込まれる。  一隅の席に着く、家族も同じ。買った物が入る袋の山を店専用の箱に収め、テーブルの下に置く。土地の名物料理に、舌鼓を打つ。  新城真(しんじょう まこと)もおいしいとは思っていた。並ぶどの料理も。空腹だったし。特に、皮はパリッと焼かれて、中はジューシーに仕上げたピリッと辛い肉料理。普段は残す、焼き野菜もたいらげさせた。一方で、味気ないと感じてもいた。  骨だけ載った皿を脇に退ける。ふっくらとした形のグラスを手前に持ってくる。店に入ったとき、真の目を奪った。店員が運ぶ、水色の飲み物。飾られた果物と花には触れず。ストローをくわえる。ジュースの甘味が広がった。  家族との弾まぬ会話に、真は飽きる。通路を見やった。奥から歩いてきた親子連れ。父親の服装は、風通しの良いシャツだが。息子が着ている服の形が変わっていた。脱ぎ着する方法が想像つかず。でも、物欲しそうな息子の手を引いて、父親は止めている。自分の家と同じだ、と笑った。
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