交錯する運命

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「いーい! スポンサーのおじいちゃんはねぇ。初孫のあんたと遊ぶのを楽しみにしているのよ」 「分かってるよ」  瑠璃が耳元でささやく。ぷくっと瑠衣は、頬を膨らませた。隣の椅子に座る由利亜は結んだ口角を上げる。義理の母の自分に遠慮して、小さな声でしゃべったと思われるが、聞き取れた。  息子の由衣と義理の娘の瑠璃が来る前。自分の夫の佳衣(かい)と孫の瑠衣が走って行くのを目撃していた。かけているサングラスを下にずらして。口を挟むべきじゃないと黙っていた。  波打ち際で遊びと思いきや。孫を残して、沖へ泳いでいってしまった。本人は良いところを見せたいと思っての行動だろうが。しょぼんとして帰ってきた孫を見ると。育ジイを目指したいなら、失格だ。  それにしても、と由利亜は思い返す。自分の子どもが産まれたときは、仕事一辺倒だったくせに。初孫が産まれたとたんに、休みを取るとは。 「少なくとも、あれくらい、はしゃぎなさいよ」 「ハーイ!」  波と追いかけっこしている子どもを指差して、瑠璃は言う。気のない返事を瑠衣はする。母がたとえに出した子は、読書を始める前から同じ遊びをしている。何がそんなに面白いと思っていたからだ。 「さあて、買い物にでも行って来ようかな」  ガイドブックに載る市場の方を見て、瑠璃は言う。聞いていた父の由衣は、がっくりと膝をつく。持っていたビーチ・ボールが転がっていってしまう。慌てて拾った。海辺で遊んでやって、楽しさを教えるべきだとの考えだ。 「お義母さまは、どうします?」 「そうねえ」  瑠璃の誘いに、由利亜は心を動かされる。上はUVカットのパーカーを着て、下は八分裾のパンツを穿いている。出掛けるのは、差し支えない。息子の嫁の瑠璃は。水着のままだ。着替えが済むのを待たされる。気になることもあるし。あいまいな返事で済ませた。 「あれ? 言ってなかった? ぼくの推理と勘じゃ。もう一度、事件が起きるって」  母と祖母を、瑠衣は止める。二人は顔を見合わせた。
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