交錯する運命

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 飛行機の中で、事件について聞いた。愛国戦線と呼ばれる組織が、行く先の国でテロを起こした、と。とんぼ返りは、屈したみたいで嫌だった。人込みに行かないと、話し合って決めた。  瑠衣の推理は、聞いていたが。市場での買い物を瑠璃は楽しみにしていたし。未練があった。 「膨らませたビーチ・ボールを無駄にしないでくれ」  まさか、信じていないと、息子に言えない。瑠璃は話のつぎほに困る。由衣が助け船を出す。 「おじいちゃんを除け者にすると、すねてしまって大変よ」  由利亜の助言で、佳衣が戻って来るのを待つ。瑠衣は、両親の砂遊びに付き合う。砂で城を作るという。すぐに、夢中になる。後に、聞かれる。どちらが面白かったか? 本と答えて、瑠璃に背中を叩かれた。  海辺で遊んだり、歩いたりしている人たちが、左右に分かれる。まるで、道を作るように。家族には分かる。祖父の佳衣が戻ってきた。紹介した人から必ず、聞かれる。その筋の人か? と。否定して教える。ただの経営者だ。 「やあ。すまん、すまん。つい、どこまで泳げるか。確かめたくなってな。沖まで行ってしまったよ」  頭をかきかき、佳衣は謝り、言い訳した。由利亜は赦さず、バシッと肩を叩いた。孫を一人にした罰と言われて、祖父は言い返せなかった。迷子になったり、溺れたり、誘拐されたらどうするの。言っていることが正当と分かるので、身を縮めて聞きいった。  瑠衣は父からビーチ・ボールを渡される。祖父を指し示されずとも、心得ている。 「理音(りおん)!どうした?」  ふっと、瑠衣は振り返る。自分が呼ばれた訳ではないが。気になった。波打ち際で、はしゃいでいた子だ。本を読んでいる間、ずっと。男親に名前を呼ばれた理音という子は、睨んでいた。市場を。自分の母と祖母が行きたがっていた。  瑠衣には、理音が唸っているように見えた。人間なのに。両親に聞かれても、なんでもないとかぶりを振った。 「おじいちゃん。ビーチ・バレー、やろう」 「おお! いいとも」  申し訳なさそうに立つ、佳衣の側に瑠衣は駆け寄る。孫の誘いに、祖父は機嫌良く応じた。
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