交錯する運命

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 荷物番の由利亜が審判。佳衣と瑠衣、由衣と瑠璃に分かれて対決。ビーチ・ボールを由利亜が投げ上げた。 4  地面を伝わる揺れと風が伝える低い音。佳衣は素早く、瑠衣を抱き上げる。由利亜の元へ。ビーチ・ボールを拾い、由衣は妻の側に行く。瑠璃が見ている方を向く。  建物から上がる黒煙。赤い火の手も。行きたかった市場からだ。瑠衣の推理と勘は、正しかった。瑠璃も由利亜も身を震わせる。瑠衣を言いくるめて買い物していたら、巻き込まれていた。ケガでは済まなかったかもしれない。 「事件! 取材しなきゃ」  上がった声に、新田家の面々は我に返る。水着姿の女が走り出す。男の子が突進する。足にぶつかり、二人共に砂浜に転がった。瑠衣は気づく。うなり声を上げているように見えた子だ、と。 「りーおーんー!! ママは今からお仕事なの。分かるでしょ」 「……っちゃ、ダメ」  頼みの綱とばかりに、女は歩み寄ってきた男を見上げる。助けるどころか、彼はかぶりを振る。 「ハイ、ハイ。分かりました。理音の望みどおり、どこにも行きません」  ため息を一つ。女は子どもに譲歩する。嬉しそうに抱きつく子どもの背中を撫でた。視線は、市場に向く。あ?あ、スクープが?。叱られるだろうな。近くにいたのに、何で物にしなかった。恨めしげに市場を見た。どんな事が起きたのか、気になった。  二歩目から、花梨は走り出す。背が高い分、歩幅がある。間に合わないと思った真也は、真を抱き上げる。走って追いかけた。引き離される一方だった。 「変な臭いがする」 「えっ?」  突然、真が言い出す。聞き返そうとした瞬間。真也の体が吹っ飛ぶ。床を転がり滑る。  全身に生じる痛みが、真っ白になった頭を働かせる。息子の無事を確かめた。身を起こして、辺りを見回す。視界の端に映った物を見たくて、体の向きを返る。  非常口を示す明かり。ひと部屋分向こうの窓から入る日差し。薄暗い中でも分かる瓦礫の山。歪んだ窓枠に、わずかに残る硝子。壁も天井も崩れて、穴が開いている。砂がサラサラと落ちた。
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