プロローグ

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チケットには『豪華クルーザー!一週間の夢の旅!』と、記載されている。集合日時は、三日後の午前十一時となっている。 「何だ、これは?」 葵は美夢にチケットを右手でヒラヒラさせて聞いた。 「お兄ちゃんが、葵と行って来いって。葵……あんた、どうせ暇なんでしょ?本当はお兄ちゃんと行く予定だったんだけど、仕事が入ったみたいで……」 葵は少し考えて、美夢に言った。 「ふむ……成程……普段捜査に協力している僕に対して、警部殿からのささやかなお礼といったところか」 「まぁ、そういうこと……お兄ちゃん、葵には結構感謝してんのよ。ねぇ、もちろん行くよね?」 美夢は華やかであろう夏休みの予定ができた事に対してだろうか、期待で一杯といった表情をしている。 葵は確かに度々宗吾からの捜査に協力に応じているが、葵自身も宗吾には感謝している。 いくら幼なじみの兄とはいえ、警察の捜査に関わるなど、いち大学生が簡単に経験出来る事ではない。 貴重な経験をさせて貰っている、宗吾の好意を無下にはできない。 そして何よりも、この豪華クルーザーの旅を、何よりも楽しみにしている美夢の期待を裏切るような返事をすれば、後が怖い。 葵は髪をぐしゃぐしゃしながら言った。 「分かった……行こう。警部殿には感謝すると、伝えてくれ」 美夢は小さくガッツポーズをしている。 「よっしゃっ!葵が行かないって言ったら、キャンセルするところだったんだよ」 「まぁ、気分転換にはちょうどいいか……」 「それじゃあ、当日迎えに来るから、ちゃんと一週間分の荷物の準備しておきなさいよ!」 その後、美夢は葵と準備の話をし、帰った。帰り際に葵に準備を怠るなと、言ったことは、言うまでもない。 幼なじみとの二人旅。 相手が美人なだけに、羨ましく思われそうな展開だが、葵にとっては、ちょうどいい気分転換……位の感覚だった。
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