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……三日後某港……
葵と美夢はタクシーで、チケットに記載されている、とある港にやって来た。
時刻は午前10時40分過ぎといったところか、午前とはいえ日射しが二人の色白い、腕や首に照りつく。
「まだ午前だけど、暑いねぇ……日焼け止め塗ってくればよかった。でも、晴れてよかったねっ」
オシャレな麦わら帽子を被り、白のワンピースをヒラつかせながら、美夢は、機嫌良く、はしゃいでいる。
一方の葵は、黒と青のチェッカー柄のシャツに、色の濃いめのジーンズを履いた、シンプルな服装だ。
「そうだな……確かにいい天気だ。いや、良すぎるくらいだ。インドア派の僕には少々刺激が強いな」
葵の言う通り、空には雲が一つもなく快晴だ。
「これくらいの天気だから、船に乗った時に気持ちいいんじゃないっ!だいち雨だったら最悪の船旅よっ!」
「ふむ……確かに美夢の言う通りだな」
美夢の言う通り、雨の中の船旅など想像するだけで、気分が落ちる。いくらインドア派の葵でも、それは避けたいところだ。
葵は何かを発見したようで、美夢に言った。
「それにしても…、ずいぶん人気のない港だな。古びた漁船らしきものが……何隻かあるな。ただ、それらに紛れて一隻、僕らが搭乗するであろう船があるな」
葵の指差す方を、美夢も見てみる。するとそこには、この寂しい港には到底似つかわしくない、豪華なクルーザーらしき物がそこにはあった。
葵は腕時計で時間を確認し、美夢に「おそらく、あれだ……行こう」と言い、美夢とクルーザーの方へ向かった。
美夢は「待ってよ」と、言い。スーツケースを引きずりながら葵を追いかけた。
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