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砦に戻ってからも、俺とフレイの関係に何か特別な事があるわけじゃなかった。
いや、いっそ何もなさ過ぎて俺が戸惑うほどだった。
あの告白は、俺の気のせいだったのか?
それとも、からかわれたのか?
なんにしても、悶々としてしまっている。
もう少し何かあるはずだ。気まずい空気や、妙に気を使う感じとか。
おかしい……
変に甘く、変に遠く、気遣いや気まずい中にも互いの視線が交わる。
そんな初々しい感じを想像していたのに、お前はどうして通常運転だフレイ!
「どうかなさいましたか、隊長?」
俺の仕事が進まないのを見て、フレイが声をかけてくる。
そして不意に、大きく節の立つ手が俺の額に触れた。
「!」
心臓が、突然飛び上がったように思った。
なんだってこいつ、こんな事をするんだよ!
俺の気も知らずに…
不意に浮かんだ言葉に、俺自身が動揺する。それもどうなんだ。
「熱はありませんね。何か、おかしな物を食べましたか?」
「子供じゃないんだ、拾い食いしたような事を言うな!」
俺とフレイは俺の方が一つ年上だ。なのにこいつは時々、俺を子供のように扱う。
払いのけて睨み付ければ、またあの寂しそうな熱のある目だ。
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