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「そりゃ、あんな公衆の面前でやらかせば、誰かしら聞いてるだろ」
言われて、落ち込んだ。
言われてみればそうだ。モンスター討伐というアドレナリン全開の状態でも、隠れて言われたんじゃないなら聞いていて当然だ。
ってことは、だ…もしかして、今頃全体に広まって…
「どうするんだ?」
「どうするって! それは……なんか…」
嫌悪があるなら、悩まず頭叩いて終わった。
嫌悪がなくてもその気がなければ、冗談にして断った。
戸惑い、何かに期待し、そうならない事に動揺しているのは、俺が受け入れているからだ。
「まぁ、その顔だとまんざらでもないんだろうな」
「でもフレイのほうが全然態度変わらないんだ! 俺は…俺は顔がまともに見られないのに」
「あいつの方が上手ってだけだろ。こういう事は惚れた奴の方が弱い。なんなら、カマかけてみるか?」
頼りなく見上げる先で、グランがニヤリと男臭い笑みを浮かべた。
その次の瞬間、腕を引かれて俺は引き寄せられた。
精悍なグランの顔が直ぐ近くにある。こいつ、無駄に男の色気があるんだ。
顔が近づいて、俺の頬に触れそうになる。酒も飲んでないのにこのノリはちょっと恥ずかしい。身を捩った、その時だった。
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