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『いつも不安で寂しかったけど、明君がいてくれたから俺は笑っていられた。楽しい思い出をありがとう。俺も明君の思い出になれたら嬉しいな。  これから先の明君の幸せを心から願っています。  最後に、約束と違う形になったけど俺の思いをもう一度伝えます。  俺は明君のことが大好きです。  八十年くらい経って、明君がこっちに来たら今度こそ直接思いを伝えます。俺は若い時のままで、明君はおじいさんかもしれないけどね。  それまで、俺はそばにいられないけど、明君は幸せに生きてね。』 「八十年って、何歳まで生きるんだよ」  明は手紙を胸に当てると、泣きながら笑った。  ――二年も待たされたのに、さらに八十年も待てと優雨は言うのか――まあ、待ってやるか。そのかわり、優雨のところにいったら思いっきり甘えて、思いっきりワガママを聞いてもらおう。それから何度もキスをしてもらう。明が歳を取っていたって関係ない。八十年も待つんだ。それくらいやってもらってもバチは当たらないだろう。  窓の側に行き、網戸を開け放つと、明は涼しい風に溜息を吐く。 「あ、……雨……」  窓の外で、夕顔の花が降り始めた雨に濡れていた。 「……ありがとう」  あの雨の日に自分を救ってくれた大切な人を思いながら、明は微笑んだ。  夜の闇の中――白い思い出が、優しい雨に揺れていた。   FIN
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