序 

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 明は憂鬱な気持ちを吐き出すように、溜息を吐く。活気のない明のことなど気にも留めず、夕顔はただ風に揺れていた。  春から少しずつツルを伸ばしていった夕顔は、夏になると一気に成長し花をつけた。  この夕顔は今年の春に明がホームセンターで買ってきたものだ。優雨と夜の散歩をしたときに夕顔を見て以来、頭から離れなかったからだ。  そのときの明は優雨が夕顔に似ていると思ってそれを優雨に伝えた。名前だけではなく、太陽を避けて夜に咲くところや、白い花びらの繊細さがよく似ていると感じたからだ。それを聞いた優雨は苦笑いを浮かべて明に夕顔の花言葉を教えてくれた。  ――夜と罪。  花言葉に悪い意味があることを知らなかった明は、似ていると言ったことを後悔した。が、三つ目の花言葉を知った今、やはり夕顔と優雨は似ていたのだと思う。  夕顔の苗を買ったとき、気の良い女性店員が教えてくれた三つ目の花言葉を思い浮かべる。  三つ目の花言葉は――
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