一談目 第1章 綺麗な歌声

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私の名前は真希。 小さな村の神社に生まれたの。 少し離れたところにもう一つ神社があってそこには秋邪って言う私と同い年の男の子が住んでるの。 小さな村なだけあって子供の数は少なく全員合わせてやっと20人いるかいないか位。 よく小説とかだとみんな団結するかもしれないけど私たちの場合みんなが農業やってる中私と秋邪だけ神社の子どもだから避けられてるんだ。 でも全く寂しくないの。私には秋邪がいるもん。 「あ、シュウちゃん!」 「マイ。声おっきいよ。 」 いつも秋邪は私に声が大きいって注意してくれた。 「今日は何する?」 「んー、かごめかごめがいいな」 「わかった!」 いつも遊んでいる公園まで2人で手を繋いでかごめかごめを歌う。 いつもいつもみんなが何かしらの歌を歌っている。 なぜなら私たちの村には昔から伝統があるから。 その伝統は村の子供の中から一人選ばれ私の住んでいる赤芽神社で歌を歌うの。 昔までは人柱を用意していたらしいけどそんな酷いことはやらなくなり代わりに歌を歌い機嫌を損ねないようにするんですって。 この村でその歌い手になるのはどんなことよりも誇りに思えるものだった。 だから私も秋邪も必死に歌の練習をしていたのだ。 「ねえ、シュウちゃん。」 「なんだい?」 男の人でも女の人でもどちらでもありそうな綺麗な声。 この声を聞いている時はとても落ち着くんだ。 「もうすぐだね。」 「何が」 「歌い手の発表よ!シュウちゃん声綺麗だし受かってるんじゃない?」 そう。とても綺麗で澄んだ声の秋邪の声は誰もがみんなが聞き惚れてしまうほど素敵だった。私はその声に嫉妬していたのだ。 「そうかもね。そこそこの自信はあるよ。」 「とても楽しみだね!」 歌い手発表までにもっと練習しなくちゃ。赤芽神社の娘だし歌いたい。 私はずっとそんなことを考えながら日々を過ごしていた。 「ねえ、シュウちゃん。そろそろ帰ろっか。」 「そうだね。マイ。練習がんばって。」 「シュウちゃんも頑張ってね!」 本当は頑張ってなんて思ってない。 むしろ調子に乗って全部狂っちゃえばいいのに。 そんな醜い心を持ったまま神社まで帰った。 歌い手発表まであと2日。
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