海に沈む夕日

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「お、おい!どうしたんだ?!」 筋肉質の男は、急に吹き飛ばされた相棒に声を荒げるも、さっきの攻撃であえなく痩身の男は気絶していた。 「次はお前だ。覚悟しろ!」 「ぐっ……くそっ!」 分が悪いとみたのか、捕えていた女性をカイト目掛けて突き飛ばすと、倒れている痩身の男を拾い上げ、そのまま全力疾走で路地裏から出ようとする。 「っ、こら待て!」 突き飛ばされた女性を受け止めるのに気を取られ、あっという間に男の逃走を許してしまった。 また吐息で風を打ち出そうと、小さく息を吸い込んだ。 すると突然、 逃走する男の行く手を遮るように、一人の女性が立ちふさがるように現れた。 少し乱れた茶色のセミロングに、歴戦を重ねた数多の切り傷を負った褐色の肌を、惜しげもなく晒す程の露出度が高いビキニアーマーを身に纏い、腰にはそれなりに立派な剣を携えている。 「どけっ!クソアマが!」 どかないと見たのか、男は空いた右腕を振りかぶる。走りながら殴りつけてくるようだ。 だが女性は全く怯える様子はなく、どころか依然として立ち塞いだままだった。 「…………」 「おらぁ!」 女性目掛けて、男は拳を振るった。しかしその拳は女性に届くことはない。それより先に、突き出そうとする男の右腕の側面に、女性の鋭い裏拳が入ったからだ。 「ぐっ!?」 一瞬、吹き飛ばされたと思う程の衝撃、男が反射的に弾かれた右腕を見遣っている間、その顔面目掛けて、女性の力強い鉄拳が飛び込んだ。 ぐぎゃ、という情けない悲鳴と共に、男は意識を失った。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 「……ったく、勝手にどこに行ったかと思いきや……また人助けかよ、しかも女」 気絶している男二人を縄で縛りあげながら、ビキニアーマーの女性、『アンジェラ・バルバトス』は愚痴をこぼす。 「女だからってやってる訳じゃない、助けた相手がたまたま女だっただけだ」 対し、言い返すのはカイトだ。彼はさっきまで、男たちに捕まっていた女性を表通りに送ったばかりで、戻って開口一番、アンジェラに愚痴を言われたのであった。 「そうやって、異性からモテモテになる事を、ハーレムって言うんだよな。うちのギルドで男なのお前だけだし」 「ハーレムって言うが、俺にベタベタしないだろ」 「別にベタベタするだけが、ハーレムとは限んねーよ。ハーレムに偏見持ち過ぎだろ」
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