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そんな言い合いをしながら、気絶した男二人をギルドへと連れ帰った。
本来なら彼らは魔導遣使に引き渡す案件で、ギルドへ連行するほどではなかったが、彼らが所持していたある物で事情が変わった。
あるマークを刻んだナイフだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
二人が帰ってきたギルドの一室。そこは様々な資料や書類が本として本棚やキャビネットに並べられたり、書類そのまま壁に立てかけている。
「……ふむ、その連れてきた男たちから、この持ち物が出たということか」
その部屋の机に座っている緑色の長髪に、スリットが入ったドレスを身に纏った女性が、机上に並べられた二つのナイフを手にし、まじまじと検分していた。
彼女は『黄色の黄昏』のギルドマスター、アリサ・シーシェパードだ。
先ほどまで、魔導士協会に提出する書類に目を通していたアリサだが、戻ってきたカイトとアンジェラが部屋に入ってくるや否や、持ってきた物を見せてきたのだ。
今はその持ってきた物を確認する為に、作業を中断している。
「あぁそうだ。ナイフに付いてるそれが、うちとしちゃ見逃せねーものと思ってな」
アンジェラが言ったナイフに付いているそれとは、刃に刻まれているヒレと鱗が目立つ半魚人の顔を模したマークの事だ。
このマークの意味を、ギルドマスターであるアリサはすぐに理解した。
「……成程、『海人の狩人』か」
『海人の狩人』
半魚人の顔をマークとし、このコーベリア近辺で出没する裏ギルドだ。
コーベリアに訪れる商人や旅人を襲い、金品を奪うという犯罪を行なっていた。その度にこちらが退治していたが、それでも被害は収まらず、埒が明かない状態が続いていた。
最近は拠点を叩くべきだと意見が上がっていたので、裏ギルドのメンバーたる二人を捕えたのは実に僥倖だ。情報によっては、拠点を割り出せる可能性もある。
「その男たちはどうした?」
「今、セラスが尋問してるところだ。一人は雷の属性魔法を使っていたが、セラスと比べれば大した事はない」
「……カイト、お前受けたのかよ?」
カイトの話から、アンジェラは雷を受けたと捉えたようで、少し引き気味に言った。
紛う事なき事実ではあるが。
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