海に沈む夕日

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「何にせよ、奴らが情報を吐かない事には、『海人の狩人(シーマンハンター)』の動向は不明だ。奴らが動きを見せるまで待機。やるべき事はしておけ」 確証が得られない今、動く意味はないと判断しての命令だった。 後は軽く挨拶を済ませてから、二人は部屋を出た。するとアンジェラがため息を付いた。 「やるべき事っつってもなー、具体的に何すりゃ良いんだか……」 「情報収集は当然だ、しかし裏ギルドの所在はおろか、手がかりもない。とりあえず鍛錬でもやっとけば良いだろ」 「反復練習は好きじゃねーんだよなぁ」 アンジェラは剣を扱っているものの、剣術の腕はほぼ皆無に等しい。 というのも、彼女は剣を鈍器のように扱うからだ。その上己の魔法を使用してるので、槌の如き一撃必殺に拘ってる為か、剣術のけも字も知らないような有様になっている。 「何言ってるんだ。それがあるからこそ、強くなるって事だろ。現に俺だって肺活量を鍛えたから、強くなったって言っても過言じゃない」 「そりゃカイトは、ただいつもより息を止めて、水の中に潜るだけだろ?やる事簡単過ぎるぜ」 「いやいや、これが結構大変でぶっ」 会話を続けようとカイトの視界が、突然暗くなったかと思えば、何やら壁にぶつかった。しかし建物の壁と違い、まるでクッションにぶつかったような、低反発な感触だった。 「あら~カイトくん、よそ見しながら歩いちゃダメよ~」 のほほんと、のんびりとした声の主は、カイトがぶつかった壁からだった。というか、壁じゃない。 カイトよりも、アンジェラよりも高い背丈の女性だった。 ウェーブのかかったロングヘアーに、目の端が垂れた茶色の瞳、豊満な胸部とすらりとした体型を、紺色のオーバーオールだけで纏い、両手には白の手袋をはめている。 カイトがぶつかったのは壁ではなく、女性の豊満な乳房だった。 「おーエレンじゃん、仕事終わりか?」 「そうよ~。今からマスターに報告するとこなの~」 しかし胸にカイトが埋まっていても、オーバーオールの女性、『エレン・アンファーレ』は会話をやめなかった。これくらい気にも留めないらしい。 「……ぶはっ」 耐えかねて、カイトが胸から離れる。余程息が詰まっていたのか、大きく呼吸している。 「よそ見した事は、悪かったよ。しかし少しくらい恥じらいというか、嫌がってくれないと怖いんだが」
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