海に沈む夕日

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カイトは球体状の風を、海面に向けて投げつけると、風は海面に触れた途端破裂し、海面に波紋を作る。 「んー……慣らすって言っても、あまり集中しすぎなのも、ダメなんだよね?」 「そうだな。戦闘中じゃ敵は待ってくれない」 「うー。それじゃあわたしやられちゃうよ~」 ベルは拗ねるようにふくれっ面を浮かべて、海面を見遣った。既に波紋はさざ波によってかき消されていた。 「だから今は、そうならない為の訓練だ」 「はぁーい。練習あるのみ、だね」 そう言ってから、ベルは両手を前に向け、手のひらに魔力を集中する。するとゆっくりながら、空気が手のひらの上に集まっていき、一つの風の塊を形成した。 「(集中集中……形を崩さないように慣らして……)えいっ!」 確信を得た声と共に、風の塊を海面に投げつけた。しかし塊は海面に到達する事無く、またもや消え失せてしまった。 「うっ……また失敗した」 「そう急かさなくても良い。形状を留めるだけに集中しろ」 こんな感じで、二人の訓練はしばらく続いた。失敗するたびに、カイトが丁寧に教え、ベルはそのたびに奮起して、実践する。 その繰り返しを経て、ようやく形状を維持し、海面にぶつける事が出来たのは、既に夕日は水平線に沈みかかっていた。 「や、やった!海についた!」 「ちょっと怪しい所だったけど……一応到達したからクリアだな。これからも繰り返して練習していけ。というわけで今日はここまでだ」 ひたすら風の塊を、海に投げつけるだけとはいえ、ベルの魔力はほとんど使い切ったも同じだろう。カイトはそう判断して、訓練を取りやめたのだ。 「家では魔力を手に集中するイメージを積んでおくこと、それだけでも形状維持の訓練には十分なる」 「はーい」 その時、海から潮風が流れ込んだ。そこまで強いものではなかったが、ベルは反射的に海の方向に目を向けた。 「……お兄ちゃん。今日荒れるかも」 「?」 カイトもつられて海を見るが、時化とは程遠い穏やかなさざ波が、海面を撫でるくらいの状態で、荒れるとは思えない有様だ。 しかしカイトはベルの言葉を疑わず、受け入れるように話を進めた。 「そうか、もうその季節か、いつ来る?」 「んー……多分暗くなりきった頃かな。お日様が沈み始めてるから、今漁に出てる船は早く戻ってきた方が良いよ」
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