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焔玉機関
ゴンドア大陸の各所から採掘される〈焔石〉――
この赤黒い石は、火を取り込み、周囲の酸素と結びつく事で非常に高い温度を持つ発熱作用を引き起こし、しかも一度火を入れた焔石は、少なく見ても数日、質と使いようによっては一ヶ月近く熱を発する。その上、この現象は燃焼ではないため、排煙などを引き起こさない、理想の燃料と云える。
ただし、それは[火]でなくてはならない。周囲の熱や、瞬間的な火花でも発熱現象を起こすことはないのだ。
ただし、焔石が複数固まって存在している場合、その中に火を入れれば、連鎖反応で次々と発熱現象を引き起こす(かつてその現象にて、焔石鉱山が街ごと壊滅状態になったと伝聞されている)。
焔石は石炭や木炭と比べても若干高価ではあるが、握り拳程度の大きさでも十分な高熱を持ち、その上非常に長持ちするため、調理、金属加工、後に触れる焔玉機関の簡略型である〈焔石機関〉の燃料としても使用される。
それでも、石炭や木炭の需要が失われた訳ではない。
一部の調理など、高すぎる火力故に向かない用途も存在し、更に、炭と、石炭を加工したコークスなどは、(焔石では炭素が発生しないため)鉄や鋼の加工に必需品となっている。
一度焔石に火を入れると、周囲の酸素を吸収し続け、寿命が尽きるまで発熱現象を止めることはない。少々の水程度ではたちまち蒸発してしまうだろう。
この現象を止めるためには、鉄の蓋などで酸素を絶つしかない。
寿命の尽きた焔石は、発火し、そのまま崩れてしまう。
その焔石を粉砕し、特殊な技術で再結晶したものが、〈焔玉〉である――
まるで紅玉のような輝きを持つ焔玉は、焔石とは比べものにならない高温度の発熱作用を発生させることが出来る。
また、焔石では起きてしまう連鎖反応も起きることはないが、反面、発熱を引き出すにはより温度の高い火(炎)が必要となる。
焔玉を制作するためには、特殊な設備と、高度な心象具現化術を必要とするため、中原国家群の中では工房都市のみである(噂では一部個人の工房が精製可能と云われている)。従って、この炎の宝玉は、見た目通り高価である。どのみち、高火力故に民間での用途は非常に限られており、庶民が入手する必要はないのであるが。
そう、この焔玉の使用目的はただ一つ、焔玉機関の燃料としてのみである。
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