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僕らはしばらくのあいだ、調布サッカー場から夕焼けに染まる富士山を2人で………眺めていた…そして僕は途方に暮れていた。
(はぁ…困ったなぁ…)
ガォ…
「なにが?どうしたのよ?」
(だから…なんで怪獣になっちゃったんだろう…これからどうやって生きていくんだろうか。ってさ。)
ガォ…ガォ
「あんたはどうしたいのさ?」
(怪獣やめたい…)
ガォ…
「バカね。もう怪獣になっちゃったんだから、怪獣としてがんばるしかないのよ。」
(だって、なりたくてなったわけじゃないんだもん。)
ガォ…ガォ
「あんたね。人生、なりたいようになれる人なんて、どれくらいいると思ってるの?怪獣になったのはあなたに怪獣になる才能があったからよ。神様はね。この地球が、ちゃんと長生き出来るように、あなたに怪獣の役割を与えたのよ。あたしだって漫画家になりたいけど、漫画家になれていない。だけどね、もし世界中の人が漫画家だったら、世界は成り立たないでしょ。世の中には他にも目立たないけれど、大切な役割がたくさんあって、そこにはたくさんの命が必要なの。神様はね。全体を見渡して、そこにもっともふさわしい命を配置してるのよ。」
(で。僕が怪獣なの?)
ガォ…
僕はなんだかとても悲しくなって、涙が溢れてきた。
「あんたまた泣いてんの?いったい何がそんなに悲しいわけ?」
(ひどいよ。まゆちゃん‼僕がまゆちゃんの事どれだけ好きか。小さい時から見て来て知ってるでしょ?怪獣になったら、まゆちゃんと暮らしていけないじゃん‼まゆちゃんと結婚できないじゃん‼まゆちゃんとキスできないじゃん‼)
ガオーーーー‼
「なんでよ?あんたも小さい時からあたしの事見て来て、まだ、わかんないの?あたしもひろくんの事が大好きだよ。」
(だって…怪獣と人間だよ。)
ガォ…
「あんた知らないの?女の子の愛は障害が大きければ大きいほど燃えるものなのよ。」
(はぁ?)
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