僕が怪獣になった

13/15
前へ
/15ページ
次へ
僕らはしばらくのあいだ、調布サッカー場から夕焼けに染まる富士山を2人で………眺めていた…そして僕は途方に暮れていた。 (はぁ…困ったなぁ…) ガォ… 「なにが?どうしたのよ?」 (だから…なんで怪獣になっちゃったんだろう…これからどうやって生きていくんだろうか。ってさ。) ガォ…ガォ 「あんたはどうしたいのさ?」 (怪獣やめたい…) ガォ… 「バカね。もう怪獣になっちゃったんだから、怪獣としてがんばるしかないのよ。」 (だって、なりたくてなったわけじゃないんだもん。) ガォ…ガォ 「あんたね。人生、なりたいようになれる人なんて、どれくらいいると思ってるの?怪獣になったのはあなたに怪獣になる才能があったからよ。神様はね。この地球が、ちゃんと長生き出来るように、あなたに怪獣の役割を与えたのよ。あたしだって漫画家になりたいけど、漫画家になれていない。だけどね、もし世界中の人が漫画家だったら、世界は成り立たないでしょ。世の中には他にも目立たないけれど、大切な役割がたくさんあって、そこにはたくさんの命が必要なの。神様はね。全体を見渡して、そこにもっともふさわしい命を配置してるのよ。」 (で。僕が怪獣なの?) ガォ… 僕はなんだかとても悲しくなって、涙が溢れてきた。 「あんたまた泣いてんの?いったい何がそんなに悲しいわけ?」 (ひどいよ。まゆちゃん‼僕がまゆちゃんの事どれだけ好きか。小さい時から見て来て知ってるでしょ?怪獣になったら、まゆちゃんと暮らしていけないじゃん‼まゆちゃんと結婚できないじゃん‼まゆちゃんとキスできないじゃん‼) ガオーーーー‼ 「なんでよ?あんたも小さい時からあたしの事見て来て、まだ、わかんないの?あたしもひろくんの事が大好きだよ。」 (だって…怪獣と人間だよ。) ガォ… 「あんた知らないの?女の子の愛は障害が大きければ大きいほど燃えるものなのよ。」 (はぁ?)
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加