第1章 ドラゴンの食事

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だが、いつの間にか先頭を歩いていた涼香が俺たちに制止の合図を出す。 「ちょっと、お二人とも!悪ふざけもそこまでに!」  涼香がいつもより緊張した声を出す。 「涼香ちゃん、どうしたの?」 「何か来ます」 「しまった、そうか。この辺は俺たちがいつも見回っている場所じゃないからな。油断していた」  俺たちはよく食料集めに出かける場所は、モンスターなどを蹴散らし、罠を仕掛けてナワバリのようにした地区だから、モンスターはほとんど出なくなっていたのだが。もうこの辺は違うんだな。  俺は気合を入れ直した。だが、若干一名、俺とは別の意味で気合が入っている奴がいた。もちろん優姫だ。俺たちはいま危険な状況にあるんだ。何、目を輝かせてやがる。 「ねぇねぇ、涼香ちゃん。敵って?」 「まだわかりません。ですがおそらく十数匹だと思います」 「涼香は勘が鋭いからな。何か来るぞ。準備しろ」 「はーい」  と言っても優姫の準備は特に何もない。普段、正面から敵に突っ込んで行っているからだ。準備が必要なのは俺と涼香だ。俺は水魔法で優姫の背中をフォロー。涼香は優姫が怪我した途端に治療する係だ。 「あれは、コボルトですね」 「ああ?、前に追い払った奴らが戻って来ちゃったかな?」 「戻って来たと言うより、俺たちがあいつらの新しいナワバリに入っちゃったと言うのが正解だろ」 「なるほどね!また追い払っちゃおう」  優姫はやる気満々だ。鬼かお前は。しかし、コボルトか。 「涼香、コボルトってどんなかんじだっけ?」  こういう時、涼香の豊富な知識が役に立つ。いや、小説ばかり読んでいたようだから、あのまま現実世界が続いていたら豊富な知識とはならなかったかもしれない。だが、これまでもこの知識になんども助けられてる。まぁ、小説などの内容と実際に現れるあいつらの実情に若干のズレはあるが、その辺は涼香を責めても仕方がないだろう。
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