第1章 ドラゴンの食事

4/27
前へ
/27ページ
次へ
 あの災害からすでに半年ほど経っただろうか。生き残った人類はそれぞれ隠れるように細々と生きているらしい。俺たちも洞穴の中に隠れながら生きている。今は新宿の森で食料を探しているところだ。この新たにできた森には、想像以上に果物など食べられるものが多かったのだ。もちろん、危険もすぐそこに転がっているが。 「ねえ、涼香!あれ、食べられるかな?」  とても太い、俺が三人集まって輪っかを作ってもこの幹の太さには敵わないだろう木になっている茶色の実を指差し、声をあげたのは一ノ宮優姫。俺の幼馴染。あの災害の時、偶然出会ってから一緒に行動している。顔は、幼馴染として真剣に評価したとしても、優姫はかわいい部類に入るだろう。何より天然だ。いや、どちらかというとアホか。髪型はいつも長髪を適当に後ろでまとめたスタイルだ。そして、俺たちは着替える服がないので、制服のままだ。優姫は都内のお嬢様学校に通っていたらしい。ベージュのブレザーに赤いチェックのスカートだ。できれば赤は目立つのでやめて欲しいが、着替えがないので仕方がないだろう。 「あれは、食べられると思いますよ。鳥が食べやすそうな位置にありますから、ね、仁さん」  こちらは冷泉涼香。こちらも制服そのままだ。濃い藍色のセーラー服に赤いリボンがついている。顔は俺の評価では相当上位で、学校に一人いる綺麗な人という感じだろうか。こちらも長髪だが、その辺に生えているアロエなどをうまくやりくりしてしっかり手入れされている。聞くところによると昔は多少パーマをかけてふわっとした髪型だったらしい。涼香は俺と優姫が寝床を求めて教会に行った時一人、教会の祭壇で寝ていた。俺も優姫も神様を信じているわけではないが、今のこの空想と現実が入り混じったような世界。神がいてもおかしくない。二人で慌てて涼香を祭壇から下ろしたのだ。本人はなぜそんなところで寝ていたのかは覚えていないそうだ。小説から得た並外れた知識があり、それ以来一緒に行動している。 「仁さん?」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加